English
ページトップへ戻る

入局・研修について

留学体験記

南方 謙二 先生
2000年4月―2001年8月
米国オレゴン州ポートランド Providence St. Vincent Medical Center, International Clinical Fellow (2001年4月からはChief fellow) 2001年10月―2003年9月
米国ミネソタ州ロチェスター Mayo Clinic, Advanced Clinical Fellow

米国臨床留学について
私は平成6年(1994年)に京都大学を卒業し、心臓血管外科に入局、卒後1年半を大学病院で研修した後に大学関連施設である日本赤十字社和歌山医療センターに赴任しました。この間にECFMG certificateを取得し、卒後7年目の2000年4月から臨床留学することになりました。オレゴン州は西海岸でワシントン州とカルフォルニア州の間にあり、ポートランドはオレゴン州最大の都市で、夏は乾燥して涼しく、冬は比較的温暖で治安も良く、大変住みやすい環境です。Providence St. Vincent Medical Centerはオレゴン州で最大の心臓病センターであり、staff surgeon 6人で年間約1500例の成人開心術を行っています。この施設は古くから外国人フェローを積極的に受け入れ、これまで多くの心臓外科医が育ってきましたが、正規のトレーニングプログラムでなかったこともあって、残念ながら2001年8月をもって終了しました。現在は他の多くのprivate practiceと同様、staff surgeonとphysician assistantで手術を行っているようです。ここでの1年半のトレーニングでは術者として執刀する機会にはあまり恵まれませんでしたが、手術の基本的な手技の習得(開閉胸、ITAやradial arteryの採取、カニューレーション)に加え、再手術の開胸なども数多く経験することが出来ました(経験症例数380例)。そして何よりも、術前評価や術後管理を通してICUや病棟のスタッフ、循環器内科や麻酔科医とのコミュニケーションの取り方や患者さんやその家族と接することから、米国で医師として働くために最低限必要なことをしっかりと学ぶことが出来たと思います。2001年の8月でinternational fellowship programが閉鎖されることになり、Dr. Starrを含む二人のスタッフに推薦状を書いていただいて、ミネソタ州のMayo Clinicに移ることになりました。
2001年9月11日、あの忌まわしいテロ事件が起こりましたが、その直後にポートランドからロチェスターに移動しました。U-HAULのトレーラーに家財道具一式を詰め込み、これを自家用車で引っ張りながら、4日間かけて家族4人での引越しとなりました。途中、ロッキー山脈を越え、モンタナ州、ノースダコタ州の荒野を駆け抜け、ロチェスターに到着した9月下旬はもうすっかり秋の景色に変っていたのを今も鮮明に覚えています。さて、Mayo Clinicは皆さんご存知の有名施設、全米病院ランキング心臓部門でも毎年クリーブランドクリニックとならび、トップ3にランクされています。もともとは1889年にMayo兄弟がprivate practiceとしてはじめた片田舎の小さな病院でしたが、その後飛躍的な発展を遂げ、二つの病院と外来部門を含め一大医療都市を形成するまでになりました。ロチェスターはミネアポリスから75マイル、いわゆるコーンベルトと呼ばれる肥沃な大地一面にトウモロコシ畑が広がる一角にあります。夏は湿度が高く不快ですが短く、冬はマイナス20度まで下がる厳寒の地で、娯楽というものはほとんどない、それゆえ家族無しの生活は辛いかもしれません。
さて、Mayo Clinicでの臨床研修ですが2001年当時、attending surgeon (consultant)が10人、正規のレジデントが3年制で心臓外科・呼吸器外科を合わせて各学年2人ずつの計6人、そのほかclinical fellowが世界中から集まって常時6-10人という体制でした。加えて、Board certifiedのclinical associateと呼ばれるスタッフが2-3人いましたが、彼らのやっていることは基本的にfellowと同じでした。各フェローは3ヶ月ごとに特定のconsultantについて、術前のコンサルト、手術の助手・執刀、術後管理と徹底してそのsurgeonから教育を受けます。各consultantは隔日に手術を行いますので、経験できる症例数はほかの施設に比べて少なくなるかもしれません。症例数の多いconsultantで年間450例、少ないconsultantで250例程度でしょうか。弁膜症の頻度が高く、大動脈弁も含めて形成術が多いため執刀するチャンスは限られますが、学ぶべきものは多くあります。小生の場合、幸運にも後半の1年は、CABG, 弁置換、僧帽弁形成などほとんどの症例で執刀することが出来ました(2年間の経験症例数約350例)。臨床留学ですので、手術経験が最も重要であることは言うまでもありませんが、カンファレンスも大変充実していますし、患者カルテの保存状態が良いのとデータベースがしっかりしているため、retrospectiveの臨床研究が非常にやりやすい環境にあります。せっかく留学したのですから、AATSやSTSで発表するのもいい経験になるはずです(もちろん言うまでもなく大きな業績になります)。小生の場合、AATSでの発表2題、ACCとSTSAでの発表が各1題あり、4本の論文が出来ました。大学卒業後15年目になりますが、このMayo clinicでの2年間が最も充実した時間だったように思います。
最後に、臨床留学を終えた後の話に移ります。小生の場合Mayoでのトレーニング中から現在勤務している富永病院での心臓外科立ち上げの話があり、帰国後(卒後10年目)すぐに部長として手術を始めることが出来ました。その後も順調に症例数を伸ばし、何とか独り立ちできた、という印象ですが、これは多くの幸運が重なった結果だと思っています。せっかく充実した海外留学を果たしても、帰国してそれを発揮する場所がない、ということは実際に多くあります。かといって、米国にスタッフとして残るためにはほとんど例外なく正規のトレーニングを受ける必要があり、general surgeryを始めからやりなおしてcardiac surgery residencyを終えるには10年近くかかってしまう現状です。もちろん例外的なケースはあるわけですが、初めからそれを期待することは難しいと思います。どの時点で、どういうポジションで、どこに帰るのか、留学する前からいくつかの選択肢を考えておく必要がありそうです。一生fellowをするわけにはいきませんから。
以上、これから留学される若い先生方の参考になれば幸いです。ご質問、ご意見がございましたらメールでご連絡ください。

京都大学医学部付属病院 心臓血管外科
南方 謙二(みなかた けんじ)
k_minakata@hotmail.com

St. Marys Hospital、この病院で心臓血管外科手術が行われています

手術室で、執刀している手前が私

Division chiefのDr. Schaffと

ページトップへ戻る

Contact

京都大学 心臓血管外科(京都大学医学部附属病院心臓血管外科病棟)
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
Tel : 075-751-3788(病棟)075-751-3784(医局) Fax : 075-751-4960
Mail : cvs@kuhp.kyoto-u.ac.jp
Copyright © Department of Cardiovascular Surgery
Graduate School of Medicine, Kyoto University All Rights Reserved.