English
ページトップへ戻る

入局・研修について

留学体験記

塚下 将樹 先生
2011年―
アメリカ合衆国 ニューヨーク NYU Langone Medical CenterのCardiothoracic surgery

私は昨年7月より、マンハッタンにあるNYU Langone Medical CenterのCardiothoracic surgeryにてクリニカルフェローをしております。NYUのCT surgeryはUS News Best Hospitalsで全米15位にランクされており、年間1200件ほどの開心術を行っています。これに加え、関連病院にBellevue Hospital、Manhattan VA hospitalがあり、それぞれ年間350件、250件ほどの症例数です。これに加え、Langone Medical centerにpediatric cardiac surgeryがあり、約150件/年の小児開心術を施行しています。これら3つの病院はマンハッタンの1st avenue, 24th street~33rd streetに並んで建っており、NYCの重要な拠点病院群となっています。

ここでのレジデンシープログラムはcategorical(アメリカでの正規の専門医を取得する場合)の場合3年間ですが、私のようなnon-categoricalのinternational fellowは2年間です。フェローは私を含めて7名おり、私以外の6名はアメリカの各施設で5年間のgeneral surgeryのレジデンシープログラムを修了してきています。ローテートは3カ月ごとで、この7名のうち3名がLangone Medical Centerのadult cardiac surgeryを、1名が同じLangoneのthoracic surgeryを、1名がpediatricを、1名がBellevueを、1名がVAをローテートしています。私はもともと日本で8年間の心臓外科の研修経験がありますが、thoracic surgeryの経験はないため、thoracic surgeryはローテートしません。attending surgeonはProgram directorのDr. Gallowayを含めて11名で、その中には僧帽弁手術で世界的に有名なDr. Carpentierと10年間ともに時代を切り開いてこられたDr. Loulmet、VA hospitalのprofessorでリサーチにも心血を注いでおられ、数多くの論文執筆のあるDr. Grossiなど、錚々たるメンバーが揃っています。逆にいうと、人気のあるNYCの病院でstaff surgeonになるのは非常に狭き門であり、その中でstaffになり、この訴訟社会の中で生き残っている彼らは相当なつわものであることは間違いありません。

NYUでの症例の内訳は8割が弁膜症手術、2割が冠動脈手術といった感じで、得意分野は低侵襲開心術で、僧帽弁手術なら右第3肋間開胸により、大動脈弁手術なら胸骨上半小切開により約7cmほどの皮膚切開で行います。これにより術後の疼痛緩和が図れ、早期離床、早期退院が可能となっており、平均して4日ほどで患者さんは元気に退院していきます。さらに昨年よりda Vinciを用いたロボット手術も1-2例/週、重度の心不全に対する補助人工心臓植え込みも数は少ないながら始めています。こういった低侵襲手術や補助人工心臓植え込みなどは日本にいたときには経験できなかった手術で、私にとっては大きな刺激ですし、勉強にもなります。

フェローの一日はかなり早く始まります。朝6時からチーフレジデント、NP(nurse practitioner)と一緒に約20人いる入院患者さんを回診し、それぞれの患者さんの治療方針をチーフレジデントが決定します。回診はリカバリールームから始まり、CCU、一般病棟と続きます。回診が終わったころには7時半くらいになっています。手術を受ける患者さんが手術室に入室するのが7時半ですので、フェローも手術室に行かないといけませんが、その前に各attending surgeonに術後患者さんの状態を報告し、自分たちが決めた治療方針を伝え、さらに集中治療部の医師に申し送りをします。というのは、フェローはすべて手術に入ってしまうので、術後の患者さんの治療を直接行うのは集中治療部の医師になるからです。これが終わると8時くらいになります。手術室に行き、手術の下準備をし9時ごろから手術を開始します。当施設では術前のカンファレンスがなく、またattending surgeonによって手術のやり方に違いがあるため、最初は戸惑いがありましたが、覚えてしまえば型どおりなので楽と言えば楽です。開心術に充てられている手術室は3部屋あり、それぞれ1-2件/日の手術があります。少ない日で2件/日、多い日なら6件/日の手術があります。

手術においてフェローに任される範囲というのはsurgeonやそれぞれのフェローの力量により異なります。経験・力量のないフェローにもやらせるsurgeonもいれば、逆にかなりできるフェローにもさせないsurgeonもいます。概して、Langone Medical Centerは大学病院であり、それなりの保険に入っている中流階級以上の患者さんが手術を受け、また場所柄、時にVIPなどの手術も行うため、フェローにさせる確率は少ないです。関連病院であるBellevueは市中病院、またVAは退役軍人病院であるため、患者層がLangoneよりは低いためか、surgeonの指導下でフェローがすべて手術できます。このように貧富の差により、受ける待遇が違うというのは医療に限らず、アメリカにおいてはごくごく一般的なことです。これはフェローにとっては有難いことで、どんな高度な手術でもBellevue, VAではフェローが手術をすることができます。実際私もVAをローテートして1週間も無いうちに難易度の高いBentall手術を執刀する機会が得られました。

手術が終われば患者さんをリカバリールームに搬送します。オーダーや毎日のprogress noteなどはNPが書いてくれます。集中治療部の医師、看護師、NPに申し送ったあと、2件目の手術に入ります。その日のすべての手術が終わると、夜の7時か8時ごろになります。それから夜の回診を行い、1日が終わります。当直が5回/月あり、皆が帰宅してから翌朝6時にふたたび回診が始まるまで患者管理を行います。当直の時には15分ごとくらいにpagerが鳴り、最初は慣れない英語でしかも薬の名前も日本のものと全く異なるので大変でしたが、最近になりようやく慣れてきました。当直の翌日は朝8時ごろに帰宅し、1日休みがもらえますが、マンハッタンはオペラ、ミュージカル、ショッピングなど、娯楽にあふれた町なので、休日といっても一日家にいるということはほとんどありません。

トレーニングという意味では手術以外にも週に1回attendingによる教育カンファレンスが、また月に一度Wet labがあります。これらはアメリカのcardiothoracic surgeryの専門医を取得するために必要不可欠なものであり、フェローに専門医を取得させるためstaffはこういった教育に非常に熱心に取り組んでいます。また3カ月に一度、case conferenceがあり、各フェローがローテートの3カ月間の間にどれくらいの数の症例をどのような内訳で経験したのかをプレゼンテーションし、専門医取得のためにあとどれだけの症例数が必要か、をみんなに見てもらいます。Wet labでは豚の心臓を用いて弁置換手術から大動脈弁温存手術という難度の高い手術までstaff surgeonと1対1で指導してもらえます。

NYUにきて10カ月が過ぎましたが、約250件の手術に入り、約100例の手術を執刀しました。ただ低侵襲開心術による僧帽弁手術はDr. Gallowayしかやっておらず、彼と手洗いできるのはチーフレジデントだけです。来年度、チーフレジデントになることができれば、それが可能となります。日本にいたときから低侵襲手術には興味があったため、ここでのトレーニングで吸収できるものをできるだけ吸収して自分のものにしたいと思っています。

最後に、このような素晴らしい環境でトレーニングを受ける機会を与えていただいた坂田教授にこの場を借りて、厚くお礼を申し上げます。 

ページトップへ戻る

Contact

京都大学 心臓血管外科(京都大学医学部附属病院心臓血管外科病棟)
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
Tel : 075-751-3788(病棟)075-751-3784(医局) Fax : 075-751-4960
Mail : cvs@kuhp.kyoto-u.ac.jp
Copyright © Department of Cardiovascular Surgery
Graduate School of Medicine, Kyoto University All Rights Reserved.