English
ページトップへ戻る

患者さんへ

虚血性心疾患(冠動脈疾患)の手術

冠動脈とは?

心臓は1分間に60~80回規則正しく収縮して全身に血液を送るポンプの役目をしています。この際心臓自身も血液を通して酸素やエネルギーを必要としています。この心臓自身を栄養する血管のことを「冠(状)動脈」と言います。

冠動脈には主に心臓の右側と下の壁を栄養する「右冠動脈」と、それ以外の場所を栄養する「左冠動脈」があり、左冠動脈は最初1本ですが途中で2本に分かれます。この最初の1本の部分は2本分の血液を流していますので、非常に重要で「主幹部」と呼ばれています。

分岐した後は、心臓の前側・左側の壁を栄養する「左前下行枝」と心臓の後ろ側の壁を栄養する「回旋枝」とよばれます。

虚血性心疾患(冠動脈疾患)とは?

動脈硬化などによりこれらの冠動脈が狭くなったり詰まってしまい、十分な血液が送られず受け手である心臓の筋肉が酸素・栄養不足になった状態が「狭心症」です。また完全に血液が途絶えてしまい心臓の筋肉が死んでしまった状態(壊死)が「心筋梗塞」です。
狭心症の場合、心臓の筋肉は生きており治療による血液量の回復により状態の改善が得られます。一方心筋梗塞はすでに心臓の筋肉は壊死しており、治療により血流が改善しても回復はしてきません。

ただし一つの心臓の中で心筋梗塞、狭心症と決定することは難しく、そのどちらともが混ざり合って存在するといったことが多いのが現状です。また、ある程度まとまった大きさで心筋梗塞を起こした場合、その部分の心臓の筋肉が薄くなったり、機能の低下により心臓が拡大し、心臓の形が変形することがあります。

これにより心臓にこぶができる「心室瘤」や心臓の中にある弁が変形により弁逆流をおこす「虚血性僧帽弁逆流」などを生じ、血圧低下や心不全などを合併することもあります。これらの状況をまとめて「虚血性心筋症」とよびます。

症状は?

狭心症の場合、一般的には「狭心痛」と呼ばれる胸痛が多いとされていますが、実際は胸部圧迫感、心窩部(みぞおち)痛、背部痛、肩痛、のどの痛み・詰まる感じ、息苦しさなど、患者さんによってまちまちです。中には無症状で心電図などの検査で初めて異常を指摘される方もおられます。

これらが運動したときにおこることもあれば、何もしていなくても起こる場合もあります。いわゆる「ニトロ」とよばれる硝酸剤を舌の下(舌下)において5分以内に胸痛などの症状が消失することで治療並びに診断となります。一方心筋梗塞を発症した場合(急性心筋梗塞)、胸痛が多くの場合激痛で、冷や汗をともない、中には死の恐怖を感じる方もおられます。ほとんどの場合硝酸剤は無効です。

虚血性心筋症の場合は、息切れ、呼吸困難、全身のむくみなど心不全症状がおこってきます。

 

治療は?

狭くなったり完全に詰まってしまったりしている冠動脈に対して、少しでも血流を改善させるような薬剤投与や、細い管である「カテーテル」を動脈内に通し病気のある冠動脈を広げる「風船療法」とよばれるカテーテル治療が内科的に行われています。また最近は広げたところが再び狭く(再狭窄)ならないよう、血管内に金属の内張りをおく「ステント」治療やさらにそれに血管内皮の増殖を抑える薬をつけた「薬剤溶出性ステント」など進歩してきています。

冠動脈バイパス手術とは?

これら内科的治療の進歩の一方で、病気が進行し重症となるとこれら内科的治療は不可能となってきます。これらの場合外科的に治療する「冠動脈バイパス術」があります。狭くなったり詰まってしまった冠動脈の先に新しく「バイパス血管」をつなげることで血流の改善を目指します。カテーテル治療との違いは病気の部分はおいたままであるということです。

バイパス血管は?

このバイパス血管のことを「グラフト」といいますが、人工血管や他人の血管を用いるわけではなく自分のなかにある血管をとって使います。大きく分けて心臓から血液をおくる血管である「動脈グラフト」と心臓に血液を返す血管である「静脈グラフト」があります。

動脈グラフトは胸骨(胸の前面にある骨)の左右両側にある「内胸動脈」、胃の下の辺縁を流れる「右胃大網動脈」、手にある「橈骨動脈」を採取して使用します。

静脈グラフトは足の内側表面にある「大伏在静脈」を用います。一般的に動脈グラフトの方が長持ちするといわれていますが、何をどこに使用するかはそれぞれの冠動脈の状態や患者さん自身の状態により変わります。

バイパス方法は?

それらの血管と冠動脈自身を糸と針で縫い合わせ(吻合)ます。以前は全例「人工心肺」という血液循環維持装置を使って、安全に心臓を止められる状態にしておいて、心臓をとめた状態でおこなう「心停止下冠動脈バイパス術」が行われていました。

この方法の長所として、心臓が止まった状態で手術が行えるため、血管の吻合は安全に確実におこなえることがあげられます。ただ、人工心肺といった普段の血液のながれと違う状況となるため、身体にとっては負担が大きくなり、これに伴う脳梗塞など合併症発生の危険性もないわけではありません。

この問題を解決するため手術器具の発達や技術の進歩により人工心肺を使わないで心臓が動いたまま(心拍動)バイパス術をおこなう「心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB、オフポンプバイパス術)」が行われるようになってきました。人工心肺を使わないことで患者さんの負担は減りますが、その一方吻合の難しさや吻合中の血圧の変動などより慎重な手術管理が必要となってきます。

手術成績は?

日本胸部外科学会の2008年の統計では、1年間に冠動脈バイパス術のみをおこなった(単独冠動脈バイパス術)症例は14943例で、うち心停止下冠動脈バイパス術が3981例、心拍動下冠動脈バイパス術が10962例おこなわれておりました。手術による死亡率は心停止下に行われた予定手術で1.2%、緊急手術で7.3%であったの対して人工心肺を使用せずに行われた手術ではそれぞれ1.0%、4.5%でした。

当科では1999年1月より2009年3月までに単独冠動脈バイパス術は330例が行われており、心拍動下冠動脈バイパス術189例、心停止下冠動脈バイパス術141例でした。うち手術死亡は3例(0.9%)あり、内訳は心拍動下のものが2例(腸管壊死、血管損傷)心停止下で1例(腸管壊死)でした。

<単独・初回・待機的冠動脈バイパス術の日本全国での症例数と死亡率の年次推移(2000-2009)>

ページトップへ戻る

Contact

京都大学 心臓血管外科(京都大学医学部附属病院心臓血管外科病棟)
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
Tel : 075-751-3788(病棟)075-751-3784(医局) Fax : 075-751-4960
Mail : cvs@kuhp.kyoto-u.ac.jp
Copyright © Department of Cardiovascular Surgery
Graduate School of Medicine, Kyoto University All Rights Reserved.