English
ページトップへ戻る

患者さんへ

弁膜症

心臓弁膜症

心臓の解剖は下記の通りですが、心臓には4つの弁があります。

心臓の弁は心臓の各部屋の間にあって血液を滞りなく通過させ、かつ逆流が起こらないように一方行にのみ血液を流す役目があります。したがって、この心臓弁に関しては弁が狭くなって血液がうまく流れなくなった状態(狭窄症)と弁がうまく閉じずに逆流が生じてしまう状態(閉鎖不全症)があります。

大動脈弁疾患

血液は左心室から大動脈弁を通過し大動脈を通り、全身に血液が流れます。大動脈弁疾患には大動脈弁狭窄症と大動脈弁閉鎖不全症があります。

1.大動脈弁狭窄症は最近非常に多くなっている病気で生まれつき大動脈弁が狭くなっている(先天性)場合を除き普通は中年以降に発症してきます。動脈硬化によるものが多いのですが、基礎疾患として先天性の2尖弁(通常、大動脈弁は3枚の葉っぱのような弁尖からなりますが、これが生まれつき2枚しかない異常)が関係していることも多くあります。

ちなみに先天性の2尖弁は非常に多い先天異常の一種で全体の約2%程度に存在するといわれ(つまり小学校の健診などで心臓超音波検査をすれば100人に2人はこの異常を持っているわけです)、これ自体が問題になることはありません。ただ、この2尖弁の場合は他の人に比べて弁の逆流を生じやすかったり、将来的に狭窄症を発症しやすいといわれています。

この大動脈弁が狭くなって血液の流れが滞ると心臓に負担がかかり、心不全の原因になります。進行すれば運動したときに息が苦しくなったり、胸が痛くなったり、動悸を感じたりします。もっと進行すれば失神したりすることもあり、突然死の原因になることさえあります。治療法は人工弁による置換術(いたんだ弁を切り取り、その代わりに人工の弁を植え込む手術)となります。

2.大動脈弁閉鎖不全症
この病気は頻度として多いのですが、逆流の程度が進行してきても症状が出にくいこともあって発見されたときは心不全がかなり進行していることが少なくありません。典型的な症状は運動時の息切れ、疲れやすいなどですが、進行してくれば動悸、全身の浮腫(顔や足に水がたまった状態)などが出現してきます。

病気が進行すればするほど、手術をしても長生きできないことが多く、早期に発見し心不全が出現してくるまえに手術をすることが勧められています。手術のタイミングを判定するためには心臓超音波(エコー)検査が不可欠で、逆流の程度、心臓の大きさ、心臓の収縮力などをもとに手術の是非が決定されます。不必要な手術は当然避けなければいけませんが、症状が出るまで心不全を放置するのも問題です。

信頼性の高い心臓エコーによる注意深い経過観察が必要です。手術方法は通常、人工弁による置換手術が一般的ですが、症例によっては自己の大動脈弁を切り取ることなく温存し、適当な細工を加えることによって修理する形成術が可能な場合があります。

1980年ごろから臨床応用され始め、ともに改良に改良を重ねて現在では第3世代といわれるモデルになっています。生物の組織から出来ているため、血の塊が付きにくく従って手術直後の時期(1-3ヶ月)を除いて、血を固まりにくくする薬の内服は一般的には必要ありません。しかしながら開発当初から生体弁は耐久性に問題があり、7-8年で弁の構造異常が生じて再度手術が必要となることが知られていました。血液中のカルシウムが生体弁に沈着し、弁が硬くなって逆流を生じたり狭窄を生じたりするのです。

カルシウムが沈着しないような加工がいろいろと施され、最近ではその耐久性が飛躍的に向上しています。特に、65歳以上の高齢者の大動脈弁にこの生体弁を使用した場合、生体弁の方がそれを移植された患者さんの寿命よりも長持ちする、つまり2回目の手術は必要なく一生もつ可能性が高いというデータが出ています。高齢者になると心臓病以外にもいろいろな病気を起こしてくるため、ワーファリンの内服が必要な機械弁よりもそれを必要としない生体弁のほうが手術後の生活の質(Quality of Life; QOL)を向上させることが出来ると期待できます。

最後に異常の無い自分自身の肺動脈弁を取り出して大動脈弁に移植する方法があります。オートグラフト(Autograft)と呼ばれるもので1960年代、イギリスのDr. Donald Rossが開発した方法で、一般的にロス手術(Ross procedure)と呼ばれています。人間にとってより重要な大動脈弁を自己の肺動脈弁で置き換えることにより、従来の生体弁よりも耐久性を高められる可能性があるということです。しかしながら肺動脈弁は切り取られてしまうため、これを何かで補填する必要があります。何よりも元々は一つの弁だけの病気であったのが、手術をすることにより二つの弁の病気になってしまうというジレンマがあり、決して一般的な治療法ではありません。ただ、小児の場合、自己の肺動脈弁は大動脈弁に移植されても成長を続けると言われており、この場合は他の機械弁や生体弁よりも有効と言えるかも知れません。

【大動脈弁手術】

三尖弁閉鎖不全症

三尖弁は下図の通り、右心房と右心室の間にあります。血液は上・下大静脈→右心房→三尖弁→右心室→肺動脈と流れます。三尖弁閉鎖不全症は、三尖弁を通過して右心室へ流れた血液が右心房へ逆流を起こしてしまう病気です。多くは僧帽弁疾患や大動脈弁疾患など他の心臓弁膜症や、左心室の機能が落ちること(左心不全)が原因で起こります。三尖弁逆流が中等度逆流以下あれば症状が認められないことが多いですが、高度逆流になると、下肢の浮腫や肝臓の腫大等認められます。

三尖弁閉鎖不全症の原因の多くが、三尖弁基部(弁輪)の拡大が原因で弁の接合が悪くなり、逆流を起こしています。手術は拡大した三尖弁輪を縫い縮め、弁の接合を改善させる手術を行います

僧帽弁膜症

僧帽弁閉鎖不全症
僧帽弁狭窄症同様、リウマチ性心疾患としての頻度は激減し、その代わりにいわゆる粘液性変化によるもの(弁の組織が変性し、弁のかみ合わせが悪くなる状態)や女性に多い僧帽弁逸脱症(弁尖の一部がかみ合わない状態)、それに弁尖をつなぎとめているひもが切れて弁尖のかみあわせが悪くなった状態(腱索断裂)などが多くなっています。

これも放置して進行すると、心房細動に代表される不整脈の出現、労作時の呼吸困難や、全身の浮腫などが出現します。大動脈弁閉鎖不全症に比べて症状が出やすく、比較的早期に発見されることが多いのですが、これも進行する前に、早期に治療することが推奨されています。治療法は自己の僧帽弁を温存し、適当な細工を加えることによって修復する形成術が可能な場合が多く、人工弁にくらべて手術自体が安全で、合併症も少なく長生きできることが分かっています(手術方法は下記にあります)。

ただし、数年のちに閉鎖不全が再発して2回目の手術が必要になる場合もあります。2006年米国心臓病学会が出版した、心臓弁膜症治療に関するガイドラインでは、重症の僧帽弁閉鎖不全の場合、修復手術が90%以上可能な施設であれば、症状が出現する前でも手術を考慮すべきであると、明言されています。つまり手術を受ける場合は、弁形成術がどのくらい可能なのか充分に調べた上で、施設で選ぶべきだと言えます。

僧帽弁狭窄症
これはリウマチ性心疾患、つまり幼少期のリウマチ熱が原因で数十年の経過を経て僧帽弁が硬くなって生じることが多いといわれています。ただ、近年抗生物質による感染症の治療が飛躍的に進んだため、このリウマチ熱自体が少なくなり、したがってこの病気自体も少なくなっています。症状としては心房細動に代表される不整脈の出現、労作時の呼吸困難や、全身の浮腫などです。

肺の血圧が上昇し、痰に血液が混じることもあります。不整脈が原因の脳梗塞が発症することもあります。リウマチ性以外の原因としては日本ではさほど問題ではありませんでしたが、米国で市販されていた痩せ薬によるものは大きな社会的問題を引き起こし、現在でも全米各地で裁判が進行している状況です。

治療法は大きく分けてカテーテルによる風船療法と手術によるものがあります。カテーテルによる風船治療は日本人(井上寛治先生、京都大学医学部出身)によって開発された方法です。風船治療は手術と比較すると小さな侵襲で治療できますので僧帽弁狭窄症に対する治療の第一選択となります。ただし弁の形態などの原因で適応にならない場合があります。その場合には人工弁置換術を選択することになります。

人工弁の選択

人工弁置換術を受ける場合、どのような弁を入れるのが良いか、各々の患者様の年齢や病態、社会的背景を充分に踏まえて決定する必要があります。代表的な機械弁・生体弁について解説します。

長所 短所 適応
機械弁

・すぐれた耐久性

・血栓の危険性があるため、
ワーファリンの内服が必要
(→納豆が食べられなくなります)

・開閉音が聞こえる

・若年者

・人工弁の劣化を望まない方

・透析治療が必要な方

生体弁

・血栓の危険性が少ないため、
ワーファリンの内服は不要

・感染症に強い

・機械弁よりも耐久年数が少ない

・耐久年数をこえてくると、
再置換術が必要

・若年者

・人工弁の劣化を望まない方

・透析治療が必要な方

機械弁

機械弁は円形の枠の中でパイロリックカーボンと呼ばれる炭素素材から出来たディスクが開閉することによりその弁機能を発揮します。枠の周囲には人工繊維が付いており、ここに糸と針をかけて心臓に縫いつけるのです。世界的にみてセントジュードメディカル社製の機械弁(SJM弁)、カーボメディクス社製の機械弁(CarboMedics弁)が歴史も長く、最も多く使われています。ともにアメリカ製です。
一方、生体にとっては異物であるため、人工弁の構造物に血の塊(血栓)が付着しやすく、これが原因で人工弁の機能不全や脳梗塞をはじめとする血栓・塞栓症を発症する危険性があります。したがって、機械弁を移植された患者さんは全員、一生涯に渡って血栓が出来にくくなる薬(ワーファリン)の服用とその適切なコントロールが必要となります。

生体弁

人間や動物(ウシ・ブタ)など生物の組織から作られた人工弁を生体弁といいます。現在日本でもっとも多く使用されているのはエドワーズライフサイエンス社製のウシ心外膜弁(CEP弁)ならびにメドトロニクス社製のブタモザイク弁(Mosaic弁)です。前者はウシの心臓を包んでいる膜(心外膜)を加工して作ったもの、後者はブタの心臓から大動脈弁を切り取り加工したものです。ともにアメリカの工場で作られ日本に輸入されています。

1980年ごろから臨床応用され始め、ともに改良に改良を重ねて現在では第3世代といわれるモデルになっています。生物の組織から出来ているため、血の塊が付きにくく従って手術直後の時期(1-3ヶ月)を除いて、血を固まりにくくする薬の内服は一般的には必要ありません。しかしながら開発当初から生体弁は耐久性に問題があり、7-8年で弁の構造異常が生じて再度手術が必要となることが知られていました。血液中のカルシウムが生体弁に沈着し、弁が硬くなって逆流を生じたり狭窄を生じたりするのです。

カルシウムが沈着しないような加工がいろいろと施され、最近ではその耐久性が飛躍的に向上しています。特に、65歳以上の高齢者の大動脈弁にこの生体弁を使用した場合、生体弁の方がそれを移植された患者さんの寿命よりも長持ちする、つまり2回目の手術は必要なく一生もつ可能性が高いというデータが出ています。高齢者になると心臓病以外にもいろいろな病気を起こしてくるため、ワーファリンの内服が必要な機械弁よりもそれを必要としない生体弁のほうが手術後の生活の質(Quality of Life; QOL)を向上させることが出来ると期待できます。

ページトップへ戻る

Contact

京都大学 心臓血管外科(京都大学医学部附属病院心臓血管外科病棟)
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
Tel : 075-751-3788(病棟)075-751-3784(医局) Fax : 075-751-4960
Mail : cvs@kuhp.kyoto-u.ac.jp
Copyright © Department of Cardiovascular Surgery
Graduate School of Medicine, Kyoto University All Rights Reserved.