English
ページトップへ戻る

患者さんへ

末梢血管疾患

心臓から押し出される血液の通り道を動脈といい、心臓へ戻ってくる血液の通り道を静脈といいます。末梢血管には動脈の病気と静脈の病気があります。

<動脈疾患>
心臓血管外科で主に取り扱う動脈疾患としては、閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患)、急性動脈閉塞症、バージャー病(閉塞性血栓血管炎)、末梢動脈瘤などが挙げられます。

閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患) について

加齢などによって動脈の内側(内腔) にコレステロールが蓄積したり、血管が硬くもろくなることを動脈硬化といいます。末梢動脈疾患は足や手の動脈がこの動脈硬化によって狭くなったり詰まったりして血液の流れが悪くなることでさまざまな症状をひき起こす病気のことで閉塞性動脈硬化症ともいわれます。
我が国での閉塞性動脈硬化症の発生頻度を人口比から検討したデータはないものの、患者数は40万人程度と推測され、無症候性のものを含めると50~80万人前後の患者群がいると推測されます。
足に動脈硬化症があるということは、心臓や脳などの全身の重要な動脈にも動脈硬化症がある可能性があります。つまり、心筋梗塞や狭心症、あるいは脳梗塞や脳血栓といった血管障害をひき起こしてしまう危険があるということです。そのため、手や足のみを治療すればいいというわけではなく、将来、他の病気を引き起こさないように、全身の健康管理に気をつける必要があります。

末梢動脈疾患の症状による分類(Fontaine分類)
病気の進行に従って、様々な症状を呈する。Fontaine分類(フォンテイン分類)は、病期と症状を結びつけたものとして広く用いられています。
Fontaine 1度(もっとも軽症):下肢の冷感や色調の変化
Fontaine 2度 :間歇性跛行(かんけつせいはこう)。間歇性跛行とは、数十から数百m歩くと痛みのため歩行継続不可能になる状態です。なお、腰部脊柱管狭窄症でもみられるため鑑別が必要です。
Fontaine 3度 :安静時疼痛
Fontaine 4度(もっとも重症):下肢の壊死、皮膚潰瘍。糖尿病などによる末梢神経障害がない限り、激しい痛みを伴います。

末梢動脈疾患の治療法
末梢動脈疾患による血行障害の治療には次の4つの方法があります。
①保存的治療(運動療法+薬物療法):血管を拡張する薬や、血液をサラサラにする薬を使いながら、運動をして、閉塞している周囲の血管の太さや本数を増やして、血液の流れを改善します。ただ単に運動すれはよいのではなく適切な負荷をかけ、少なくとも3ヶ月以上継続することが重要です。
②血行再建術(カテーテル治療):血管内に挿入したカテーテルを使用して、狭窄部位や閉塞部位をバルーンで拡張(風船治療)したり、ステントという金属の筒で血管の内側から補強して血流改善をはかります。局所麻酔で行うことができ、体への負担は少ないですが、再狭窄が一定の頻度で起こるという欠点があります。
③血行再建術(バイパス手術):閉塞している部分を迂回した血管を作ります。迂回路に使う血管は人工血管や自分の血管を別のところから取ってきて使います。世界共通の治療ガイドラインであるTASC‐IIに則って適応を判断します。
血管再生治療:Fontaine3度もしくは4度で、保存的治療でも症状が改善せず血行再建術の適応にならない患者さんを救済するための新しい治療法で、臨床試験が行われています。

急性動脈閉塞症について

急性動脈閉塞症とは何らかの原因によって動脈が閉塞し、急性の循環障害をきたした状態で、閉塞の原因から、血栓などの血管を塞ぐ塊(塞栓)がほかの部位から運ばれてきて動脈を閉塞する塞栓症と、動脈硬化がある血管などに血栓ができて動脈を閉塞する血栓症に分けられます。迅速、的確な診断と適切な治療を行わなければ肢壊死をきたすとともに、血流阻害により障害を生じた部位に血流を再開させるとさまざまな毒性物質が産生され(虚血再灌流障害)、動脈閉塞のある部位だけでなく、全身の主要臓器にも障害をきたす(遠隔臓器障害)ことがあります。
(myonephropathic metabolic syndrome: MNMS)。急性動脈閉塞症は治療が遅れると死に至る可能性もある重篤な疾患です。
  急性に発症し、進行する患肢の疼痛(Pain)、脈拍消失(Pulselessness)、蒼白(Pallor/paleness)、 知覚鈍麻(Paresthesia)、運動麻痺(Paralysis/paresis)の5つの徴候(5P)が一般的によく知られている症状で、典型例では、激しい痛みで発症し、患肢は冷たく蒼白となり、知覚鈍麻をきたすようになります。
 診断がつけば非経口抗凝固療法(ヘパリン投与)を直ちに開始し、2次血栓の進行を抑えることが大切です。発症から手術までの時間が肢の予後を左右し、発症6時間以内に血流再開が得られれば高率に救肢が可能ですが、24時間を経過すると約20%が切断に至るとされています。塞栓症では閉塞している固まりを取り除く手術(外科的血栓除去術)を行います。血栓症では外科的血栓除去術あるいは、危機的状況でない早期であれば血栓溶解療法(ウロキナーゼ、ヘパリン等)が適応となりますが、血栓症では、閉塞した動脈自体に問題があるため、これらの治療だけでは不十分な場合も少なくなく、この場合は適切な時期に人工血管などを用いたバイパス手術の追加が必要となります。

バージャー病について

バージャー病の成因として、喫煙、感染、栄養障害、自己免疫、血管内皮細胞の活性化などがあげられており、微小循環障害や人種差が指摘されていますが、現在のところ原因ははっきりわかっていません。しかし、ほとんどが喫煙者に発症しており、喫煙との関連性(喫煙は血管を収縮させたり(血管攣縮)、血液を固まりやすくする(凝固能亢進)作用があります。)が強く疑われています。2006年の時点でバージャー病と認定された患者数は約8,000名となっています。喫煙歴のある20~40歳代の青壮年に多くみられ、男性がほとんどを占めています。

診断基準
(1)50 歳未満の発症
(2)喫煙歴を有する
(3)膝窩動脈以下の閉塞がある
(4)動脈閉塞がある、叉は遊走性静脈炎の既往がある
(5)高血圧症、高脂血症、糖尿病を合併しない
以上の5 項目を満たし膠原病の検査所見が陰性の場合、バージャー病と診断されます。
治療の原則は
(1)禁煙の励行、間接喫煙も避ける
(2)患肢ならびに全身の保温に努め、寒冷暴露を避ける
(3)規則正しい歩行訓練、運動療法を行う
が基本となりますが、閉塞性動脈硬化症同様、病状に応じて内服、カテーテル治療、手術、血管新生療法を行っていきます。

<静脈疾患>
静脈の病気としては下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、動静脈瘻などが挙げられます。このうち心臓血管外科で主に取り扱う疾患である下肢静脈瘤について説明します。

下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤とは?
下肢静脈には深く筋肉の中を走る「深部静脈」と比較的表層に近い皮膚と筋肉の間を走る「表在静脈」があり、静脈瘤ができるのは伏在静脈と呼ばれる表在静脈です。
下肢の静脈には重力により血液が逆流しないように弁がついていますが、それらの弁が壊れると血液の逆流が起こり、うっ血が生じて血管の拡張や蛇行することによりコブができます。

これが下肢静脈瘤です。

下肢静脈瘤の症状
「足の血管が膨らんでぼこぼこしている」という外見的な症状のほかに、足が「だるい」、「重い」、「疲れる」「痛い」、「よくつる」、「むくむ」、「かゆい」 などの症状が見られることがあります。また、症状が悪化し重症化すると血流うっ滞による皮膚炎を起こし、皮膚が黒ずんできたり、潰瘍を形成したりすることもあります。

下肢静脈瘤発生のメカニズム
心臓から足の先に送り出された血液が、再び心臓まで戻るためには、重力に逆らって上がっていく必要があります。重力によって血液が逆流しないように静脈内には逆流防止弁がついています。

下肢静脈瘤の主な原因はこの逆流防止弁の機能不全で、弁が壊れて働かなくなり、慢性的に血液が逆流してしまうことにより、静脈瘤が発症します。

下肢静脈瘤の治療法
下肢静脈瘤に対して現在一般的に行われている治療法としては、1)保存的治療、2)硬化療法、3)高位結紮術、4)静脈抜去(ストリッピング)術、5)血管内レーザー治療、などが挙げられます。
<保存的治療>
寝るときに足を高くする、軽い運動をする、長時間の立ち仕事を避ける、弾性ストッキングを着用するなどの治療法です。静脈瘤による症状を軽減するための治療法で静脈瘤そのものが治るわけではありません。
<硬化療法>
静脈瘤を起こしている血管に薬(硬化剤)を注射して外から圧迫し、血管自体を固める・癒着させる方法です。固まった血管は、次第に萎縮して消えていきます。硬化療法は外来で行うことができます。患者さんの負担は少なく傷跡も残らないのですが、大きな静脈瘤にはあまり有効ではなく単独治療ではほとんどの場合再発する、という欠点があります。注射をした場所にしこりや痛み、色素沈着がおこることがあります。
<高位結紮>
静脈瘤の多くは脚のつけ根(そけい部)の静脈の弁が壊れることによる血液の逆流によって起こります。高位結紮術とは、脚のつけ根で静脈をしばって(結紮)切り離し、この逆流を止める治療で、局所麻酔で日帰り手術が可能です。しかし、この高位結紮術は単独では静脈瘤が十分に治らなかったり、再発が多いことがわかっています。そのため傷を増やして静脈をしばる場所を増やしたり、同時に硬化療法を行います。
<静脈抜去(ストリッピング)術>
伏在型静脈瘤の標準的な治療で、弁の壊れた不要な静脈を引き抜いてしまう手術です。足のつけねと足首の2カ所を切開して、悪くなった血管の中に手術用ワイヤーを通して血管と糸で結び、ワイヤーを引き抜くことによって静脈瘤を取り去ります。多くは全身麻酔や下半身麻酔で2〜3日の入院で行われます。
<血管内レーザー治療>
逆流する表在静脈の中に細いレーザーファイバーを通し、レーザーを照射することにより主に血管壁を損傷・収縮させて静脈を閉塞させます。従来のストリッピング手術に比べて体への負担が少ないということで、欧米では下肢静脈瘤治療の中心となっています。日本においても2011年1月より血管内レーザー治療が保険適応になりました。

ページトップへ戻る

Contact

京都大学 心臓血管外科(京都大学医学部附属病院心臓血管外科病棟)
〒606-8507 京都市左京区聖護院川原町54
Tel : 075-751-3788(病棟)075-751-3784(医局) Fax : 075-751-4960
Mail : cvs@kuhp.kyoto-u.ac.jp
Copyright © Department of Cardiovascular Surgery
Graduate School of Medicine, Kyoto University All Rights Reserved.